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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 頁
「ホウキョウ・ホウシュン、やめたぜ。」
と、誰かが隅の方からどなった。
「知ってるよ。」
次郎はふりむきもしないで答えた。それから、のそのそと立ち上って、あっけにとられているみんなの顔を一巡見まわしたあと、默って教室を出て行ってしまった。
次郎が出て行くのとほとんど入れちがいに新賀がはいって来たが、彼は、次郎の机の上の雑嚢を見ると、すぐ隣の席の生徒にたずねた。
「本田はどこへ行ったい?」
「知らんよ。たった今出て行ったんだが、何だか変だったぜ。」
新賀はちょっと考えた。が、すぐ自分の雑嚢を机の上にほうりなげ、あたふたと次郎のあとを追った。
間もなく、新賀は次郎を見つけたらしく、二人は、例の銃器庫のかげで、始業の鐘が鳴るまで何か話しあっていた。
*
翌日の第一学期終業式の校長の訓辞はごく簡単ですみ、引きつづき宝鏡先生の送別式が行われた。
「宝鏡先生は、今回○○県の○○高等女学校に転任されることになりまして……」
校長は、先ずそんなふうに紹介の言葉をはじめた。すると、生徒たちは、「おや」という眼をして一せいに顔をうごかした。無資格教師には出向辞令が出ないということを知らなかった彼らは、宝鏡先生は退職したとばかり思いこんでいたのである。