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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 頁

青空文庫

四 宝鏡先生

」

大沢は船が川曲をまわって手巾が見えなくなると、二人に言った。

次郎も恭一も、急流を下る爽快さを味うよりも、何か深い感慨にふけっているというふうだった。川幅の広いところには、鴨が群をなして浮いていたが、次郎はそれにもほとんど興味をひかれないらしかった。大沢が、

「鉄砲があるといいなあ。」

と言うと、彼は妙に悲しい気にさえなるのだった。そして船が巖の間をすれすれに急湍を下る時にも、叫び声一つあげず、じっと船頭の巧みな櫂のつかい方に見入り、かつて何かで読んだことのある話を思い出していた。それは、水に溺れかかったある偉大な宗教家が救助者に身を任せきって、もがきもしがみつきもしなかったという話だった。

船が久留米に近づいて、水の流れがゆるやかになったころ、彼はこっそり恭一に向かって言った。

「無計画の計画ってこと、僕も少しわかったような気がするよ。」

四 宝鏡先生

筑後川上流探検旅行が次郎に与えた影響は、決して小さなものではなかった。「無計画の計画」というのは、最初大沢が半ば冗談めいて言い出したことだったが、それは、次郎にとっては、彼がこれまで子供ながら抱いて来たおぼろげな運命観や人生観に、ある拠りどころを与えることになった。