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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 頁

青空文庫

をまごつかせ、自分の不断の心の修練を無力にするのか。どうして、現在友愛塾におおいかぶさっている深刻な問題以上に、自分の心をなやますのか。女性とは、恋愛とは、いったい何だろう。それは、これまで自分が考えて来た人間生活の秩序とは、全く次元のちがった秩序に属するものだろうか。

そんなはずはない!

かれは心の中で強く否定した。しかし、否定した心そのものが、やはり、ふだんの秩序を失った心でしかなかったのである。

事務室の柱時計がゆっくり、十時をうった。次郎はかぞえるともなくその音をかぞえていたが、かぞえおわると、やにわに立ちあがった。

二人が午前中に来るとすれば、もうそろそろ来るころだ。めいった顔は見せたくない。いっそ門のそとまで出て愉快に自分のほうから迎えてやろう。あとはあたって砕けるまでのことだ。――かれは冒険とも自棄ともつかない気持ちで、自分自身をはげましたのだった。

すると、ちょうどその時、事務室に人の足音がして、仕切りの引き戸を軽くノックする音がきこえた。

「どなた?」

次郎が、いぶかりながら戸をあけると、そこには大河無門が立っていた。

「おや、外出しなかったんですか。