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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 頁

青空文庫

誠吉は眼を皿のようにして立ちすくんだ。

次郎は草の上に仰向けに寝ころんで、ふうふう息をした。顔全体から炎が吹き出しているような感じだが、どうすることも出来ない。彼はただ手足をばたばたさして苦痛をこらえた。誠吉は全身をぶるぶるふるわせながら、しばらくそれを見ていたが、急に声を立てて泣き出した。そしていっさんにどこかに走って行った。

間もなくお延が子供たちと一緒に走って来たが、次郎の顔を見ると、

「あれえっ。」

と、けたたましい叫び声をあげた。

つづいて雇人たちがどやどやとやって来た。すこしおくれて謙蔵が来た。最後にお祖父さんが来た。そしてお祖母さんは、離室の縁から、

「どうしたのだえ。どうしたのだえ。」

と、もどかしそうに何度も叫んだ。

しばらくはただ騒がしかった。次郎はその間じゅう、眼をつぶってうめいていた。彼の苦痛は実際ひどかった。が、彼はうめきながらも、みんなの驚きや、心配や、同情の程度をひそかに測定することを忘れなかった。そして、彼のむごたらしい面相と、苦痛を訴えるうめき声とによって、彼の悪行――少くとも大きな過失に対する非難は、とっくに帳消しにされてしまっているらしいのを知って、内心ほっとした。