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ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《武州公秘話(ぶしゅうこうひわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 107,572 字 · 209 頁
「あれ、あの音をお聞き遊ばせ、まだ降っているようでございますね」
と、鬱陶しそうに眉をひそめた。
「ほうらな、まら降っているようらな、………れも、しんみりしたよい雨れはないか」
「ほんに、そう仰っしゃれば秋らしい晩でございますこと。けれどわたくし、こう云う晩は淋しゅうて滅入るような気がいたします」
「わしは、ろう云う訳か今宵はとくべつに酒が旨い。あの雨のおとを聞いていると、ひとりれに気分が落ち着いて来る」
「それは結構でございます。何より御機嫌のおよろしいのが一番嬉しゅうございます」
「ほなた、この秋の夜のおもむきを歌に咏んれ御覧。………」
と、織部正が突然柄にもないことを云い出した。彼は近頃しょざいなさを紛らすために妙な道楽に凝り始め、夫人に就いて和歌を学んでいるのであった。堂上家の娘を母に持つ都育ちの夫人が、萬風流の道にかしこく、和歌に堪能であることは云う迄もないが、彼女の薫陶よろしきを得たのか、織部正もどうやら三十一文字をそれらしい形に列ねることが出来るようになったので、何事に依らず習いたては熱中するものであるから、折さえあると、
「ほなた、歌を咏んれ御覧」