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ぶそうせるしがい

武装せる市街

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《武装せる市街(ぶそうせるしがい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,959 字 · 234 頁

青空文庫

完全無欠のものからも、なお、アラを探し出して一言せずにいられないのが阪西だ。完全、非の打ちどころのないものは、その完全であることが欠点となった。あまりに完成せるものは、完成せるが故に、それ以上発展性がないとの理由から。

「こゝは、津浦線の界首駅から真一文字だ。まず、こゝへ、南軍が、全力をあげて殺到して来るものと見なければならん。」彼は、ほかの将校、下士を従えて南西角の土塁にまわって来た。「末永中尉、これで、こんなひはくな土嚢塁で、幾万の敵を支え得ると思うかね。千の敵をも支え得ると思うかね。どうだね?」

「は。」

「敵は、敵だ。向うから戦闘をいどんで来るものと見て差支ない。……よし、やり直し! この一倍半の高さと、二倍の幅と、三倍の長さと、倍の機関銃を要する。」

「は。」

西南角の土塁の彼方には、遙かに、草原と、黄土の上の青畑と、団栗や、楢や、アカシヤの点々たる林が展開していた。霞んで見える。いつも、ほっついている山羊の群れもなかった。――百姓が略奪を用心してかくしたんだろう。階級が一ツちがっていても、いいだくだくと、命令を聞かなければならないのが軍人だ。