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ぶそうせるしがい
武装せる市街
黒島 伝治
線上閱讀黒島 伝治《武装せる市街(ぶそうせるしがい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,959 字 · 234 頁
同時に、妹も母も、支那兵の乱暴に対する強迫観念のようなものは、戦慄するほど強いが、中津の恐ろしさは、女達が、殆んど意識していないと思った。殊に、それを気にとめていないのは母だった。それが、彼は不満だった。母は、わざと、中津を家に引き入れているように見えた。彼は母と対立した。その気持は、知らず/\、言葉となって母が感じたかもしれない。
ある晩、マッチ工場の社宅に、六畳の物置が一と間だけ、あけて貰えるから、そこへ金目のものだけを持って避難していてはどうか、と話していた。母は、突然、中津を好きやこのんで家へ引っぱりこんでいるのではないんだ、と云いだした。幹太郎は、その鋭鋒が、自分にあたって来るのを感じた。
「一体なんで気持をこじらしているんだろう? おッ母アが、中津と通じたとでも、俺が、一度でも、もらしたためしがあるんか?」と幹太郎は思った。「馬鹿らしい、見当ちがいだ!」
彼は、こんな場合の例で、黙りこんでしまった。
「嫌いなら、なんにも、社宅へなんか行かなくってもいゝんだ。」
彼は、簡単に云った。それ切り黙りこんだ。母は、ヒステリックに、嫁に来て以来、竹三郎のことや、お前達のことを心配しない日は一日だってないんだ。