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すいちゅうのきゅうでん

水中の宮殿

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《水中の宮殿(すいちゅうのきゅうでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,533 字 · 52 頁

青空文庫

河の中の横穴――宝庫の入口か

電話をかけたり、人を走らせたり、村の医者が来たり、小屋の中は煮えくり返るような騒ぎでしたが、暁方までに、自動車で一関の病院に運んで、「命だけは取止める」と聞いて、どうやらこうやらホッとしました。

花井がいなくなると、発掘作業は行詰りですが、今となっては中止するわけにも行きません。お高さんは花井の付添で一関へ行ったので、炊事の監督は綾子、花井がやっていた人夫の号令は、健一が引受けてやるより外はなかったのでした。

「花井のかわりに僕がやられた方がよいくらいのものさ。弱ったね」

仕事に慣れない健一はこぼし抜いております。

「でも、お兄様の方が大将だと思われたんだワ。悪者はあの晩寝室が変ったことを知らずに、お兄様を刺すつもりで来たんだから」

燿子は相変らず物の底の底まで見透しております。

河の中の横穴――宝庫の入口か

「困った。人夫は皆引揚げてしまった」

「えッ」

「河原は人っ子一人いない」

「どうしたの、お兄様」

「人夫へ悪い事を吹込んだ奴があるんだ。――こんな事を綾子さんに聞かせるな」

「どんな事を、お兄様」

健一と燿子は、木下闇から、真夏の陽に照らされて、乾ききった肌を見せている河床を見ながら、ひそひそと話していました。