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すいちゅうのきゅうでん

水中の宮殿

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《水中の宮殿(すいちゅうのきゅうでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,533 字 · 52 頁

青空文庫

銅板は盗まれた――が残るフィルム

「翠川氏が? 何と言う馬鹿なことに手を出したものだ」

唐崎荘之介はプリプリ怒りましたが、翠川健太郎は有名な実業家でもあり、それに健一の言うことに間違が無かったので、どうすることも出来ません。

「いずれ改めて談判に来るぞ、馬鹿馬鹿しいにも程がある」

「どうぞ」

健一を尻目に秘書を促して荒々しく引揚げました。

銅板は盗まれた――が残るフィルム

「お兄様、銅板の絵図面はどこ?」

「六畳の押入にある筈だ」

「それが無いんです」と燿子。

「えッ」

健一も綾子も、一団になって六畳へ駆け込みました、丸太を枠にした窓の硝子戸は一杯に開いて、戸棚も開け放したまま、中の銅板は影も形もありません。

「やられたッ」

健一は、いきなり開いた窓から飛降りましたが、まだ月の出には早い林は、塗り潰したような闇で、一寸先の見透もつきません。

泥棒はみんなが次の間で夕飯をやっている隙を狙って、窓から入ったものでしょう。

「足跡があるでしょう」

燿子がコードを長くして差出した電灯の光で見ると、窓の下の柔らかい土の上には、健一の大きいブルドッグ型の靴跡の外に、先の尖った華奢な靴跡が、深々と印されているではありませんか。