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ひょうがきのかいじん

氷河期の怪人

海野 十三

線上閱讀海野 十三《氷河期の怪人(ひょうがきのかいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,321 字 · 15 頁

青空文庫

遭難に乱れず

道彦が気がついたときは、彼は、くらやみの中にいた。ガソリンの、たまらない匂いが、彼の鼻をつよくつきさすので、彼はたまらなくなって、大きなくしゃみをした。

「おお道彦か。気がついたらしいな。どうじゃ、気分は、どこか痛まないか」

くらやみの声は、木谷博士にちがいなかった。

「あっ、先生、ぼくは、大丈夫です。しかし、からだがうごきません」

「そうか。お前のからだが冷えないように、ありったけの毛布でくるんであるんだ」

「ああ、そうですか。――飛行機は、ついらくしたんですね」

「うむ、山の斜面にのりあげたんだ」

「みなさんは、どうしました」

「……む」

博士は、しばらくうなっていたが、

「かなり、ひどいけがをした。が、まあ、そのことに気をつかわないのがいい。とにかく、お前が大丈夫なら、こんな幸いなことがない。風邪をひかないようにして、夜の明けるのを待とうよ」

博士は、やさしいうちに、道彦を力づけた。そして彼の口にぷーんといい匂いのする葡萄酒の壜をあてがった。夜明までにずいぶんながい時間がかかったように思った。しかし、東の空が、うっすらと白みかかったのがわかったとき道彦は、とびたつほどうれしかった。