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ほうねんぎょうでん

法然行伝

中里 介山

線上閱讀中里 介山《法然行伝(ほうねんぎょうでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 66,110 字 · 131 頁

青空文庫

とりわけ聖徳太子にゆかりのある仏法最初の伽藍天王寺によってこの夢を見たことを不思議の縁としている。

法然が天王寺に詣でた時、明遍僧都がここへ訪ねて案内があった。法然は客殿に待っていて「さあこれへ」といわれる。明遍僧都はさし入ってまだ居直らない先きに尋ねかけて云う。

僧都「さてこの度如何いたして生死を離れたものでござりましょう」

法然「南無阿弥陀仏と唱えて往生を遂ぐるに越したことはありますまい」

僧都「たれも左様にお聞き申しては居りますが、ただその折角の念仏の時に心が散乱し、妄念の起るのを如何いたしたものでござりましょう」

法然「欲界の散地に生を受くる者、心の散乱しないということがござりましょうや。煩悩具足の凡夫の身がどうして妄念を止めることが出来ましょう。そのことに就ては私とても力の及ぶことではござりませぬ。ただ心は散り乱れ妄念は競い起るとも、口に名号を唱えなば弥陀の願力に乗じて必ず往生が致されるということだけを知って居ります」

と返事した。

僧都「それを承りたいがためにまいったのでござります」

といって明遍僧都はそのまま罷り帰ってしまった。あたりの人がそれを見て、この両名僧初対面であるに拘らず、一言も世間の礼儀の挨拶もなくて別れられたのは如何にも尊いことだと感心した。