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〔『しなしそうとにほん』しょはん〕まえがき
津田左右吉歴史論集
津田 左右吉
線上閱讀津田 左右吉《津田左右吉歴史論集(〔『しなしそうとにほん』しょはん〕まえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 79,004 字 · 156 頁
二
日本人の芸術上の趣味が淡泊とか軽快とかいう方面に偏しているように思われたのには種々の理由がある。芸術が公衆的翫賞に供せられずして私人的であるために小規模のものとなり、従って調子の低い、また小器用なものが尚ばれたこともその一であろう。四畳半式芸術とも名づくべきものが何れの方面にもある。それから、徳川時代の固定した社会において、すべて刺戟性の少いものが上品として考えられたこともその一であろう。その他、割合に安らかな生活を送って来た国民であるがため、全体に力強いところのないためもあろう。しかしながら、戦国時代、その後に現われた豊臣時代、または或る意味においては元禄時代の如く、気力の横逸し、生命の緊張した時代には随分力の強い、規模の大きい芸術が生まれている。過去ですら、そうであった。おとなしい、いわゆる上品な、さっぱりした趣味のみを将来に期待するのは大なる誤りである。
二
芸術の真味は高い趣味を有っている少数人のみに解せられる。芸術は貴族的(無論思想上の意味でいう)のものだという考もここから起り、「俗物(多数人)に何がわかるか」という高踏的態度もここから生ずる。