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ふどうするちか
浮動する地価
黒島 伝治
線上閱讀黒島 伝治《浮動する地価(ふどうするちか)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,079 字 · 29 頁
二
「もう一ッペン、あの卯をおこらしてやろうか。」
「うむ。」
「いっそ、この縄をそッと切っといてやろうよ。面白いじゃないか。」
「おゝ、やったろう、やったろう。」
二
七年して、トシエは、虹吉の妻となった。虹吉は、二十三だった。弟の僕は、十六だった。春のことである。
地主の娘と、小作兼自作農の伜との結婚は、家と家とが、つり合わなかった。トシエ自身も、虹吉の妻とはなっても、僕の家の嫁となることは望んでいなかった。
が、彼女は変調を来した生理的条件に、すべてを余儀なくされていた。
「やちもないことをしてくさって、虹吉の阿呆めが!」
母は兄の前では一言の文句もよく言わずに、かげで息子の不品行を責めた。僕は、
「早よ、ほかで嫁を貰うてやらんせんにゃ。」
母と、母の姉にあたる伯母が来あわしている椽側で云った。
「われも、子供のくせに、猪口才げなことを云うじゃないか。」いまだに『鉄砲のたま』をよく呉れる伯母は笑った。「二十三やかいで嫁を取るんは、まだ早すぎる。虹吉は、去年あたりから、やっと四斗俵がかつげるようになったばッかしじゃもん。」
僕は、猪口才げなと云われたのが不服でならなかった。