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うずまけるからすのむれ

渦巻ける烏の群

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《渦巻ける烏の群(うずまけるからすのむれ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,240 字 · 35 頁

青空文庫

右には、雪の曠野が遥か遠くへ展開している。

山へ登ってみよう、とスメターニンが云いだした。山から見下せば地理がはっきり分るかもしれなかった。それには、しかし、中隊が麓へ到着するまでに登って、様子を見て、おりてきなければならなかった。そうしなければ、また中隊長がやかましく云うのだ。

山のひだは、一層、雪が深かった。松木と武石とは、銃を杖にしてよじ登った。そこには熊の趾跡があった。それから、小さい、何か分らぬ野獣の趾跡が到るところに印されていた。蓬が雪に蔽われていた。灌木の株に靴が引っかかった。二人は、熱病のように頭がふらふらした。何もかも取りはずして、雪の上に倒れて休みたかった。

山は頂上で、次の山に連っていた。そしてそれから、また次の山が、丁度、珠数のように遠くへ続いていた。

遠く彼方の地平線まで白い雪ばかりだ。スメターニンはやはり見当がつかなかった。

中隊は、丘の上を蟻のように遅々としてやって来ていた。それは、広い、はてしのない雪の曠野で、実に、二三匹の蟻にも比すべき微々たるものであった。

「どっちへでもいい、ええかげんで連れてって呉れよ。」二人はやけになった。