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うずまけるからすのむれ

渦巻ける烏の群

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《渦巻ける烏の群(うずまけるからすのむれ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,240 字 · 35 頁

青空文庫

一〇

――彼等は、そんな風に思っていた。それより上に、彼等に魔の手が強く働いていることは、兵士達には分らなかった。

彼等が、いくらあせっても、行くさきにあるものは雪ばかりだった。彼等の四肢は麻痺してきだした。意識が遠くなりかけた。破れ小屋でもいい、それを見つけて一夜を明かしたい!

だが、どこまで行っても雪ばかりだ。……

最初に倒れたのは、松木だった。それから武石だった。

松木は、意識がぼっとして来たのは、まだ知っていた。だが、まもなく頭がくらくらして前後が分らなくなった。そして眠るように、意識は失われてしまった。

彼の四肢は凍った。そして、やがて、身体全体が固く棒のように硬ばって動かなくなった。

……雪が降った。

白い曠野に、散り散りに横たわっている黄色の肉体は、埋められて行った。雪は降った上に降り積った。倒れた兵士は、雪に蔽われ、暫らくするうちに、背嚢も、靴も、軍帽も、すべて雪の下にかくれて、彼等が横たわっている痕跡は、すっかり分らなくなってしまった。

雪は、なお、降りつづいた。……

一〇

春が来た。

太陽が雲間からにこにこかがやきだした。枯木にかかっていた雪はいつのまにか落ちてしまった。