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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《潜航艇「鷹の城」(せんこうてい「ハビヒツブルグ」)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 132,395 字 · 263 頁

青空文庫

「そこで、遺書の内容を云うと、たぶんこんなことが書いてあったと思うよ。矢伏の手が顫え、腕にも安定がない。たぶん弾は、肩を掠めて後方に飛ぶであろうから、自分が彼に代って狙撃をした。それは、ほとんど矢伏の発射と同時であって、居合せたのも、私が狙撃をしたことを知らなかったようである。というんだが、わしはなるほどと思った。要するに、問題は撃ち手の腕にあるのだからな」

屍体の菰に船蟲がざわざわざわめく音が、この奇怪な話にいっそうの凄気を添えた。しかし、若い巡査は、眼を眩しそうに瞬いて、

「ですが、居合せたもののなかで、誰かその辺の機微を、知っている者はなかったのでしょうか」

「ところが君、耳というやつはじゃよ。両側で、同時に非常な高い音を出された場合、その人間には、音の見当というのがてんで付かなくなってしまうそうだよ。そのことは、居合せた証人で、抱え淫売婦のお悦という女が証言しておる。それに、船場の女中の話によると、その遺書は、わずか五、六分の間に認められたのだし、むろん、筆跡には寸分の相違もないし、そうこうの事で、左枝検事はポンと辞表を投げ出してしもうた」

「自分が起訴をして、死刑になった男が、無罪という……。