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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《潜航艇「鷹の城」(せんこうてい「ハビヒツブルグ」)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 132,395 字 · 263 頁

青空文庫

潜航艇「鷹の城」

第一編 海底の惨劇

一、海―武人の墓

それは、夜暁までに幾ばくもない頃であった。

すでに雨は止み、波頭も低まって、その轟きがいくぶん衰えたように思われたが、闇はその頃になるとひとしおの濃さを加えた。

その深さは、ものの形体運動のいっさいを呑み尽してしまって、その頃には、海から押し上がってくる、平原のような霧があるのだけれど、その流れにも、さだかな色とてなく、なにものをも映そうとはしない。

ただ、その中をかい間ぐって、ときおり妙に冷やりとした――まるで咽喉でも痛めそうな、苦ほろい鹹気が飛んでくるので、その方向から前方を海と感ずるのみであった。

しかし、足もとの草原は、闇の中でほう茫と押し拡がっていて、やがては灰色をした砂丘となり、またその砂丘が、岩草の蔓っているあたりから険しく海に切り折れていて、その岩の壁は、烈しく照りつけられるせいか褐色に錆びついているのだ。

しかし、そういった細景が、肉の眼にてんで映ろう道理はないのであるが、またそうかといって闇を見つめていても、妙に夜という漆闇の感じがないのである。というのは、そのおり天頂を振りあおぐと、色も形もない、透きとおった片雲のようなものが見出されるであろう。