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ぼくとうきだん

濹東綺譚

永井 荷風

線上閱讀永井 荷風《濹東綺譚(ぼくとうきだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 57,666 字 · 114 頁

青空文庫

暑さも格別ですがね。」と言うと、

「そうですか。ここはもともと埋地で、碌に地揚もしないんだから。」と主人もしぶしぶ口をきき初めた。

「それでも道がよくなりましたね。第一便利になりましたね。」

「その代り、何かにつけて規則がやかましくなった。」

「そう。二三年前にゃ、通ると帽子なんぞ持って行ったものですね。」

「あれにゃ、わたし達この中の者も困ったんだよ。用があっても通れないからね。女達にそう言っても、そう一々見張りをしても居られないし、仕方がないから罰金を取るようにしたんだ。店の外へ出てお客をつかまえる処を見つかると四十二円の罰金だ。それから公園あたりへ客引を出すのも規則違反にしたんだ。」

「それも罰金ですか。」

「うむ。」

「それは幾何ですか。」

遠廻しに土地の事情を聞出そうと思った時、「安藤さん」と男の声で、何やら紙片を窓に差入れて行った者がある。同時にお雪が帰って来て、その紙を取上げ、猫板の上に置いたのを、偸見すると、謄写摺にした強盗犯人捜索の回状である。

お雪はそんなものには目も触れず、「お父さん、あした抜かなくっちゃいけないって云うのよ。この歯。」と言って、主人の方へ開いた口を向ける。