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ぼくとうきだん

濹東綺譚

永井 荷風

線上閱讀永井 荷風《濹東綺譚(ぼくとうきだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 57,666 字 · 114 頁

青空文庫

其間々には中仕切の大阪格子を隔てて、わたくしの方へも話をしかける。氷屋の男がお待遠うと云って誂えたものを持って来た。

「あなた。白玉なら食べるんでしょう。今日はわたしがおごるわ。」

「よく覚えているなア。そんな事……。」

「覚えてるわよ。実があるでしょう。だからもう、そこら中浮気するの、お止しなさい。」

「此処へ来ないと、どこか、他の家へ行くと思ってるのか。仕様がない。」

「男は大概そうだもの。」

「白玉が咽喉へつかえるよ。食べる中だけ仲好くしようや。」

「知らない。」とお雪はわざと荒々しく匙の音をさせて山盛にした氷を突崩した。

窓口を覗いた素見客が、「よう、姉さん、御馳走さま。」

「一つあげよう。口をおあき。」

「青酸加里か。命が惜しいや。」

「文無しのくせに、聞いてあきれらア。」

「何云てやんでい。溝ッ蚊女郎。」と捨台詞で行き過るのを此方も負けて居ず、

「へッ。芥溜野郎。」

「はははは。」と後から来る素見客がまた笑って通り過ぎた。

お雪は氷を一匙口へ入れては外を見ながら、無意識に、「ちょっと、ちょっと、だーんな。」と節をつけて呼んでいる中、立止って窓を覗くものがあると、甘えたような声をして、「お一人、じゃ上ってよ。