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はいいろのきおく
灰色の記憶
久坂 葉子
線上閱讀久坂 葉子《灰色の記憶(はいいろのきおく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 65,588 字 · 132 頁
母は度々その島と往復し、魚や米を土産に持ってかえった。乳母は姉達についてその島へいったっきりであった。工場へ出勤している兄と、一人になった女中と、国民服をきて丸坊主になった父と、簡素な生活になっていた。ごたごたしたうちに進級し、私はひきつづき幹事を命令された。その上、家が学校の近所である理由から、学校を守るために帰宅した後でも警報が鳴れば登校し、たくさんの役合を仰せつかるようになり、自習する暇も、考える時さえ縮められていった。戦争、戦争、そのことが一時も頭をさらず絶えず神経がピリピリしていた。父は二三年前より喘息が発病し、彼岸の頃になると決ったように起り、戦争や会社の任務の影響でそれがだんだんひどくなって来ていた。――父はこの戦争に対して非常に悲観的であった。
凡そ自分の感情を奔放に発揮することの出来ない時であり、女学生達は萎縮してしまっていた。私は少ない二三の友達と小説をよむことで小さな夢を持った。学校で小説を読むことは禁じられていたが、新聞紙でカバーし、休み時間や放課後ひそかによんだ。そして、恋愛ということに非常な関心を持ちはじめた。
四月のまだうすら寒い頃であった。