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まきのとみたろうじじょでん
牧野富太郎自叙伝
牧野 富太郎
線上閱讀牧野 富太郎《牧野富太郎自叙伝(まきのとみたろうじじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,045 字 · 185 頁
またそれから少し後の年であったが、私の町から四里余りも東の方にある高岡町に親類があって、そこへ連れられて行った事がある。この高岡の町から東南の方二里位も隔たりて新居の浜があり、私はそこへ連れて行って貰って生まれてはじめて海を見た。その浜へ打ち寄せる浪はかなり高く繰り返し繰り返しその浪頭が巻いて崩れ倒れる様を見て、私は浪が生きているもののように感じた。私の町は海から四里も距っているので、これ迄一向に海は知らなかったのです。私の十一歳頃の時であったでしょう、私ははじめて土居という師匠の寺子屋へ入門して字を習った。暫くするうちにこの寺子屋が廃せられたので、私は更に伊藤という先生の寺子屋に転じそこで習字と読書とを教わった。ここは士族の子弟ばかりであって町人は私と今一人いたぎりであった。そして士族の方が上組で町人の方が下組であった。昼食する時の挨拶が面白い。上組の士族の人々は「下組の人許してヨ」といった。これに対して下組の町人の方では「上組の御方御免」といった。この時分は明治六、七年頃であって、明治元年の維新の時を去る事まだ僅かであったため、士族と商人とは何んとなくその区別があったのである。