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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《犀星王朝小品集(おぎふくうた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 105,794 字 · 211 頁
殆、顔を打合わせるように馳りに馳った。
「姫は汝と我との間にはさまれて窮しておられるぞ。」
「汝なかりせば姫も父君もみな安らかであったろうに、汝が出て来てから凡てが悪くなったのだ。」
津の国人は馳りながらも、なお尽きぬ嘆きの言葉を絶たなかった。和泉の国人はからからと哄った。
「それはこちらからも言いたいことだ。津のなまぐさい汝ごときに姫がなびくと思うか、それが汝の間違ったそもそもなのだ。」
「片をつける時が来た。このあたりでよかろう。」
二人は先刻かいつむりを射ちそんじた土手のあたりに来て、走ることをやめた。土手は春の草を纏うて、唐の錦の枕のように柔らかだった。二人は冷たい草に素足をこころよくあてた。
「此処はいい、いずれがやられるにしても寝心地がいい。」
津の国人は確乎と足をふまえて、迥か上流を見たが、早、橘親子からは立木がかげをつくっていて見えなかった。
「距離は?」
「五十歩はどうだ。汝を射つには近すぎるかな。」
和泉の人は依然つめたく哄って歩を試しながらいった。
「では三十歩にするか、空射をせぬようにしろ。」
二人は五十歩を隔てて、別れた。弓は生きたくちなわのようにかれらの両の手にからみ出した。