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いちろうじん
犬田卯短編集二
犬田 卯
線上閱讀犬田 卯《犬田卯短編集二(いちろうじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,383 字 · 103 頁
もうじっとしているわけにはいかなかった。私は原稿書きを放っておいて、廃屋のあとを開墾するばかりに片づけたり、花をつくろうと思う空地を掘りかえしたり、果樹類を植えようとする藪を伐りはらったりしはじめた。同時に浩さんの姿を見るたびに、それとなく促すのであったが、浩さんはいっこうやって来てくれる様子はないのであった。「嫁にやった」妹が都合で戻ってくるし、嫁の里に病人が出来るし、親父の方の用事がどうで……と、そして反対に一円だ、二円だである。この頃ではもう水も汲んでくれないので、それらは一ヵ年分の約束のうちに加える条件にするより他はないのであるが、しかしどうせやらなければならぬものであるからと考えて、私たちは出してやったのであった。
浩さんの姿は見えたり見えなかったりした。ある日、近所の人が通りかかって、「浩さんがいねえちけね……」というのであった。
「まさか。」
「なんでも妹と二人で関西の方へ行っちまったとか……」
私たちは「開いた口が塞がらぬ」という状態に遭遇したのだった。実際、はたから見たらぽかんとしていたかも知れなかったのである。
「家財道具みんな売り払ったばかりでなく、畑作まで処分して出かけたッち話だね。