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いちろうじん

犬田卯短編集二

犬田 卯

線上閱讀犬田 卯《犬田卯短編集二(いちろうじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,383 字 · 103 頁

青空文庫

彼は娘らを見るとてれ臭そうに「はア、花見か、暢気だな」とつぶやきながら、娘たちから何かいわれないうち……といったように、屋敷尻の柿の木の下の方へ急いで行ってしまった。

「ほら、きっと大丈夫よ」とお民が急に張り込んで、「はア、なんとか……かんとかなんて明後日の方つん向いててれたところをみると、まんざらでもなさそうだったじゃないの、お梅ちゃんがいえば、うまくいくよ、きっと、なア、お梅ちゃん、だんぜん、買わせっちまえよ、その売れ残り。」

またしても三人で笑い声をあげたが、その下からお通が、

「ああ、やだやだ、俺ら止めた、売れ残りなんて言われてやアになっちまった。こちとらみてえで……本当に、このぶすのお民は、時々そんなとっペつもねえこと言うんだから。」

「だって売れ残りだねえか、売れ残っているんだもの。」

「でも、残りものに福があるって言うじゃない」とお梅がいった。

「そうら見ろ、あれ買って来ると、きっといい話があるから……はア、あんたの思いがかかっているんだもの、なんで誰にも手が出るもんか。」お民が重ねて言った。

そのときは何の気なしに、ただ笑って、冗談として聞きすてたが、あとで、ひとりになって考えてみると、お通はやはり、人のいう運というようなものがあるような気がした。