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いちろうじん
犬田卯短編集二
犬田 卯
線上閱讀犬田 卯《犬田卯短編集二(いちろうじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,383 字 · 103 頁
「畜生、二百円が馬と転んだか――」
覚悟はしていたものの、督促の期限がきれて執達吏から牝馬の差押を食わされたとき、彼はその結果に、いまさらびっくりせずにいられなかった。五十円の借金が十六七年もすればそれ位になるのは、前村長の言い草ではないが、まア当然……それはあえて怪しまないが、村の巡査と共にやって来た役人が、家財道具など物色したが、結局、二百円なにがしに相当するものは、厩にもそもそと藁を食っている一匹の動物しかないことを確かめて、口先で何か断りを言いながら、それに封印して去ったあと、彼は、はじめて胸が破れるほど打っていたのを知ったのであった。
第一、炭運びが出来やしない、書き入れ時だというのに。そればかりでなく、戦時下の増産計画で、共同馬耕をつい先日協議したが、それも……村では、牡馬はよほどのよぼよぼでない限り、とうに徴発されてしまって殆んど残っていなかったのだ。
結局、どうしてここを切りぬけたらいいのか。
「……やはり、娘に助けて貰うことにしたって――」その日一日、ぽかんとして家の周りをぶらついていた翌朝、彼の耳へ、今もってぶらぶらしている女房からそんなことが伝えられた。