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いちろうじん
犬田卯短編集二
犬田 卯
線上閱讀犬田 卯《犬田卯短編集二(いちろうじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,383 字 · 103 頁
」
「じゃ、ひとつ正体を見届けてやるか。」
二人が勢いこんで取ってかえした時、男爵は風呂から上って来た。そして浮島から歩いて来て、足袋がこの通りになってしまったと笑いながら、その汚れたやつを廊下へ投げすてて、風呂敷包の中から、新しいやつを引っ張り出したのであった。新しいといっても洗濯したものである。閣下……いや、男爵は、そいつの皺を伸ばしながら右足に穿き、もう一方を穿こうとすると、どうしたことか、それも右足の方である。
男爵は、瞬間妙にてれたが、チョッ、と舌打ちして、それを風呂敷包みの中へ押し込み、左足のを探したが、無い!
「宿へ忘れて来たかな! 仕方がない。」
ひとりつぶやいて、右足のも脱いで、そのまま座ってしまった。
その夜は雑談に花が咲いて、無事に過ぎた。男爵はなかなか座談に長けていたのである。いかに怪しいとにらんだからといって、まさか、真っ向からそう訊ねるわけにもいかない。いや、本ものであった場合は、大変な「失礼」にあたってしまう。
* * *
次の日、男爵は沼へ写生にでも行くかと思いのほか、村の有志訪問と出かけたのであった。