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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《猟奇の果(りょうきのはて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 頁

青空文庫

これで、この写真のもう一人の奴を拡大して見ようと思ってね」

それは彼の商売柄、雑誌社で取次販売をしている実物幻燈器械であった。

そんなことをして確めるまでもないのだけれど、両人とも幻燈という様なものに、一種の魅力を感じている男であったし、拡大された相手の顔の皺の一本一本に、穿鑿的な興味がないでもなかった。

電燈を消すと、鳥の子の無地の襖の上に、写真の両品川の顔の部分丈けが、ギョッとする程大きく映された。

本当の品川は真面目顔、もう一つの方はニヤリと笑って、無修正の、ボタボタと斑紋をなした陰影が、暗闇の二人に向って、ニューッと迫って来る感じだった。

「僕一つ笑って見るから、あの写真の顔と比べてくれ給え」

品川はそう云って、器械の後部の光線の漏れている所へ、自分の顔を持って行って、寄席の怪談のお化けみたいに、ニヤッと歯を出して見せた。

「そっくりだよ。まるで、そうしている君の顔が、そのまま向うの襖へ映っている様だ」

愛之助は云っている間に、ゾーッと頸のうしろが寒くなった。

「君。もう止そうよ。何だかいやな気持になって来た」

愛之助は幻燈というものに、常々一種異様の恐怖を持っていた。