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きょうさいかていえんまんじゅつ
猿々合戦
小野 佐世男
線上閱讀小野 佐世男《猿々合戦(きょうさいかていえんまんじゅつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 29,526 字 · 61 頁
母がかやの顔を見ながら言った。するとかやも、
「ええそうですわよ。旦那様、たしかに幽霊屋敷ですよ」
と、生きた心地が無さそうに、身をふるわせながら言った。
「うん、そういえば、僕も夕方庭のいちじくの木の影に、黒い着物を着た老婆とも老人ともつかぬ人影のたたずんでいたのを感じたですよ。それですぐに見えなくはなってしまったのですが。……どうもふしぎですよ」
と、さすがに書生の徳吉も、気味の悪そうな顔で辺りを見廻した。
3
翌朝は、からりと晴れた、まことに気持のよい秋晴れの天気だった。
赤とんぼが楽しげに飛び交うて、昨夜の恐怖なぞ、かけら一つのこさぬすがすがしさだった。広い台所で私は、出入りの商人達と何かひそひそと話しあっていた。当今とちがって、大正の時代には、立派な貸家も多く、商人は引越してくる家におしかけ、自分のお得意様を作るのに、米屋も酒屋も肉屋も、なんでも競争がはげしかった。「ソレッ!」とばかりに通帳をつくり、おしかけて来たもので、要領の好い商人なぞは、引越の手つだいなぞをするありさまであった。
この日台所にはそのような商人が一ぱい集っていた。