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きょうさいかていえんまんじゅつ
猿々合戦
小野 佐世男
線上閱讀小野 佐世男《猿々合戦(きょうさいかていえんまんじゅつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 29,526 字 · 61 頁
幽霊
1
残暑がすぎ、凉風がさわやかに落葉をさそう頃になると、きまって思い出すことがある。
私はまだ紅顔の美少年(?)だった。その頃、私達一家は小石川の家から、赤坂の新居へ移った。
庭がとても広かった。麻布の一聯隊の高い丘が、苔むした庭の後にそびえ、雑草やくるみの木が、垂れさがるように見える空の上に生い茂っていた。また、丘の下のせいかじめじめとしていて、いちじくの葉が暗い蔭をところどころに手をひろげ、庭の奥の方は陽も射さぬほどだった。
黒板塀に囲まれた小粋に見えるこの家は、風流気の多い父の好みにぴったりと合っていた。かなり大きな家で、二階は十畳の客間の他に、八畳と六畳の間があり、私の部屋はこの六畳の間で、隣りの八畳は二番目の姉の居間にあてがわれた。父たちの他の者は階下に住むことになった。
台所がばかに広く、子供心に私は、雨の日はここで友達と遊べるなと、秘かに喜こんだものだが、……たたきの所に直径五尺ほどの大井戸があった。ところがこの井戸は、半分は家の中に半分は外にはみ出て、内外いずれからも使用できるようになっているので、打ち水の時などさぞ便利だろうと思われたが、奇妙なことには、部厚い板で蓋がされ、おまけに大きな釘で開かないように釘付けにされていた。