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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
妹が別条なく自分のあとに付いている以上、所詮かの娘は他人の空似と決めてしまうよりほかはなかったが、いかになんでもそれが余りによく似ているので、西岡の不審はまだ綺麗にぬぐい去られなかった。かれは妹をみかえって小声で言った。
「あれ、御覧、あの娘を……。おまえによく似ているじゃあないか。」
扇でさし示す方角に眼をやって、お福も小声で言った。
「自分で自分の姿はわかりませんけれど、あの人はそんなにわたくしに似ているでしょうか。」
「似ているね。まったく好く似ているね。」と、西岡は説明した。「しかもきょうで三度逢うのだ。不思議じゃあないか。」
「まあ。」
とは言ったが、お福のいう通り、自分で自分の姿はわからないのであるから、かの娘がそれほど自分によく似ているかどうかを妹はうたがっているらしく、兄がしきりに不思議がっているほどに、妹はこの問題について余り多くの好奇心を挑発されないらしかった。
「ほんとうによく似ているよ。お前にそっくりだよ。」と、兄はくり返して言った。
「そうですかねえ。」
妹はやはり気乗りのしないような返事をしているので、西岡も張合い抜けがして黙ってしまったが、その眼はいつまでもかの娘のうしろ姿を追っていると、奴うなぎの前あたりで混雑のあいだにその姿を見失なった。