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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
「石川は遅いな。」と、言い合せたように二、三人の口から出た。
その時である、用人の鳥羽田重助があわただしくこの座敷へはいって来た。
「石川さんが御門前に坐っているそうでございます。」
「石川が坐っている……。どうした、どうした。」
待ち兼ねている人々はばらばらと座を起った。
二
石川房之丞が高原の屋敷の門前に坐っていたというのは、門番の報告である。門前が何か物騒がしいように思ったので、彼は窓から表を覗くと、一人の侍が傘をなげ捨てて刀をぬいて、そこらを無暗に斬り払っているようであったが、やがて刀を持ったままで雪のなかに坐り込んでしまった。
酔っているのかどうかしたのかと、門番は潜り門をあけて出ると、それはかの石川房之丞であることが判った。石川はよほど疲れたように、肩で大きい息をしながら空を睨んでいるので、ともかくも介抱して玄関へ連れ込んで、その次第を用人の鳥羽田に訴えると、鳥羽田もすぐ出て行って、女中たちに指図してまず石川のからだの雪を払わせ、水など飲ませて置いて奥へ知らせに来たのであった。
「さあ、しっかりしろ、しっかりしろ。」
大勢に取巻かれながら、石川は座敷へはいって来た。