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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
あくる朝、その知らせに驚かされて、高原の屋敷から余一郎が見舞にかけ付けた時には、堀口はもうこの世の人ではなかった。家内の人々の話によると、彼は苦しい息のあいだに、白い婆が枕もとに来ていると、幾たびか繰返して言ったそうである。それを聞いて余一郎はいよいよ顔色を暗くした。
下手人の石川の詮議は厳重になった。彼が堀口に斬りかかる時に「さっきの一言」と言ったのから想像すると、高原の屋敷で「一人で帰ると、また鬼婆にいじめられるぞ」と堀口にからかわれたのを根に持ったものらしい。それだけの意趣で竹馬の友ともいうべき堀口を殺害するとは、何分にも解し難いことであるという説もあったが、それを除いては他に子細がありそうにも思えなかった。殊に本人の口から「さっきの一言」と叫んだのであるから、それを証拠とするほかはなかった。それらの事情も本人を取押えれば明白になるのであるが、石川はその場から姿を消してしまって、自分の屋敷へも戻らなかった。
あくる十六日も雪は降りつづいた。堀口の屋敷では、今夜が通夜であるというので、高原の余一郎や、神南や森積は勿論、かるた会の仲間たちも昼間からみな寄り集まっていた。