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わたしのこうりしょうどう

私の小売商道

相馬 愛蔵

線上閱讀相馬 愛蔵《私の小売商道(わたしのこうりしょうどう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,396 字 · 312 頁

青空文庫

大学正門前のパン屋としては、私どもはもう出来るだけの発展をしていました。場所柄お客様はほとんど学生ですし、大学、一高の先生方といっても、パンでは日に何ほども買って下されるものではないと言って高級な品を造ってみたところで、銀座や日本橋――当時京橋、日本橋付近が商業の中心地でした――の客が本郷森川町に見えるものではなし、ここでは、たとえ税金の問題が起らなくしても、私共の力がこの店以上に伸びてくれば、早晩よりよき場所の移転の説が起らずにはいないところでありました。

救世軍の番頭さん

支店を設けるにしても、移転するにしても、これはなかなか冒険です。見込み違いをした日には現在以上の苦境に立たされることになりますと、その頃ある地方の呉服屋の次男で、救世軍に入ったがために家を勘当された人がありまして、日曜だけは救世軍として行軍することを条件として、店員の一人に加わっておりましたが、まずこの人を郊外の将来有望と思われる方面へ行商に出して見ることに致しました。

その頃大久保の新開地に水野葉舟、吉江孤雁、国木田独歩――間もなく茅ヶ崎南湖院に入院――戸川秋骨先生、それに島崎先生は三人のお子を失われてから新片町へ移転されましたが、ともかく、そういう方々のよりあいで一時文士村と称されたものでありまして、また淀橋の櫟林の聖者として