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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁

青空文庫

という密告から、関白家の附近にも、番所をもうけて、その出入りを見張らせるなど、粛正の風は、仮借をしなかった。

つづいては、二十六日、侍所の高ノ師泰に兵一万余をさずけ、

「義貞征伐に手間どらすな」

と、これを越前金ヶ崎攻めの加勢に、発足させた。

こういうあいだにも、後醍醐の落ちのび先を、鋭意、求めていたのはいうまでもない。

その結果。――暮も押しつまってから、脱出後の足どりが、おぼろながら、つかめてきた。

やはり河内から大和へ潜幸されていたものらしい。しかし、この方面は、相当、往来が多く、また追捕の兵も、第一に手を廻したはずのところである。

どんな偽装をもって、どうして逃げおおせられたものか。尋常一様なる御手段であったとは思われない。

「天野金剛寺古記」によると。

二十三日

帝王、賀名生に御着

二十八日

吉野金峰山に入御

と、見える。雪やあられの、厳寒の道を落ちて行ったものにしては、おそろしく日かずも早い。おそらく馬で飛ばした所も再々であったのだろう。

そして、経路から考えるに、途中では、和田、楠木などの残党がお迎えして、葛城山脈を南へ越えてゆかれたものと想像され、紀州へ入ってからは、土地の宮方、三輪の西阿、真木定観、貴志、湯浅党などが、前後を厚くおかこみして、山上の蔵王堂へと、一時、ご案内申しあげたのではなかろう