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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁

青空文庫

こんな年は、夢の世のつかのまみたいに珍しい。母上にも、こうなりましたという所をば、お目にかけようではないか。それを見れば、朝の廷臣方も安堵しようし、また自然、洛内の市民にも、正月気分が興ろうと申すもの」

いまから尊氏は、その日を、楽しんでいるふうだった。そうまでには、心からよろこべない直義ではあるにしろ、彼にも決して悪い気はしなかった。

さきに。

尊氏は、権大納言にのぼり、直義は、参議となった。しかし世人は、直義のありかたと、幕府のたてまえから推して、彼を現下の、

副将軍

と、観ていた。

事実、直義自身も、それくらいな気位だった。このさいの難関は、たんに、兄の代行者ぐらいなことでは切り抜けえないとしていたのである。

「兄は兄、おれはおれ、所信はどしどしやってゆかねば、将来、大きな悔いをみよう」

かつては、その所信から、大塔ノ宮を鎌倉の牢で刺し殺させもした、あの強い自信である。

年暮のわずかな日も、彼はむだには過ごしていない。幕府の名で、奏請を仰ぎ、堀川ノ光継、洞院ノ実世、そのほか、後醍醐について行ったとみられる十数家の公卿の官爵をけずり、また、

「近衛経忠も、どうやら臭い」