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はしがき
童話集 春
竹久 夢二
線上閱讀竹久 夢二《童話集 春(はしがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 43,531 字 · 97 頁
鎖を放たれた小犬のようにゆっくり歩くことが出来ないで、どんどんと駈けだしました。けれど出窓のところに紅雀がいたり、垣根のわきに日輪草が咲いていたりすると、きっと立止って、珍らしそうに眺めたり、手に触れるものは、きっと触って見るのでした。
いつの間にか二人は、日本橋を渡っていました。それから二人はまた野犬のように、あっちへ鼻をくっつけたり、こっちへ耳を立てて見たりしながら、どこをどう歩いたのか、大きな川のそばへ出ていました。
「隅田川だね」
「ああ」
ここまでやって来ると、もう二人ともすこし疲れて、それに腹がへっていましたから、ものを言うのさえ臆劫なのでした。だまって川の端の石の上へ腰をおろしました。
一銭蒸気がぼくぼくぼくと、首だけ出して犬が川を渡るような恰好をして川を上ったり下ったりしていました。
「お腹がすいたね」
「君は弁当持ってる?」
「持ってない、君持ってるの」
「パンがあるよ」
二人は一つの弁当をかわるがわるちぎって食べました。すると何か飲むものがほしくなりました。
眼の前には沢山水が流れていましたが、黄いろい色をした泥水でした。道の向うに、赤いカーテンを窓にかけた喫茶店がありました。