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はしがき

童話集 春

竹久 夢二

線上閱讀竹久 夢二《童話集 春(はしがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 43,531 字 · 97 頁

青空文庫

金さえ持っていれば、あすこの椅子へ腰をかけて、ソーダ水でもチョコレートでも飲めるのだということを、二人はこの時はじめて気がついたのでした。

「君お金ある?」

「ああ、二十五銭」

「ぼく五銭だ」

「お茶が一杯ずつのめるね」

二人は笑いませんでした。

「なんだか這入るのがきまりが悪いね」

「ああ、よそうよ」

二人は喫茶店の店先までそっと歩いていったが、恰度その時、中から女の笑声がしたので、びっくりして、小さい中学生達はどんどん逃げ出しました。

敵がどこまで追跡してくるかわからないような気がして、なんでも、横町を三つばかり曲って、時計屋の飾窓の下まできて、ほっとして足をとめました。二人は、もう大丈夫だと思ったのです。

ちっくたっく   ちっくたく

がっちゃこっと  がっちゃこっと

いろんな時計が、いろんな音をたててうごいているのです。そして八時十五分のもあれば、二時四十分のもありました。

「幾時頃なんだろう」

「時計屋の時計はあてにならないね」

時計屋の隣の散髪屋の時計は、十二時を八分過ぎていました。その隣の果物屋のは、十二時五分前でした。なんしろ今頃学校にいれば午餐をすまして、運動場でキャッチボールでもしている時間でした。