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ふんにょうたん

糞尿譚

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《糞尿譚(ふんにょうたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,974 字 · 99 頁

青空文庫

一間とは離れていない小屋の窓に、髪をさんばらに顔に垂らし、ぎろぎろと大きな眼を見ひらいて彼を睨みつけている白衣の女の姿があった。彦太郎は我にもなく驚愕した自分がてれ臭くなったので、卯平に声をかけ、ごりょんさんはまださっぱりせんらしいな、と云った。卯平はようやく水面から眼を離して、窓から身体をのし出して、泣くとも怒ったともつかぬ、くずれたような表情を湛え、日頃から大きい眼が、痩せ細ったために、飛び出したように見える瞳を据えて、歯を噛むような声を立てて笑い出した女房に、いきなり掴んでいた泥を投げつけ、ちょうッ、と動物を追うように呶鳴り、坐って居れ、と叫び何か大きな声でお経のような文句を云った。馬鹿、馬鹿、と女房は急に勢が抜けたように肩をすぼめ、引っこんで、暗い土間に坐りこんだらしかった。困ったもんだ、と卯平の精悍な顔にちらと悲しげな影がすぎたが、すぐにもとの元気な顔になって、執念深い狐だ、今日で十日になるのにまだ出て行かん、戸まどいして女房に憑いたりなどして阿呆狐めが、歯がゆうてならん、そこの裏の稲荷の狐らしい、暴れて仕方がないので呪禁して貰ったらいくらかおとなしくなった。