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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《細雪(ささめゆき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 頁
妙子が予想した通り、思いの外の優待に味を占めた奥畑は、二三日すると又訪ねて来、夕飯に菱富の料理を食べ、十時になっても帰ろうとせず、しまいに泊って行くと云い出したので、一往電話で幸子の許可を得た上で、窮屈だけれども八畳の間に、病人の床と「水戸ちゃん」の床に並べて、この間じゅう雪子が寝ていた床を敷いて泊め、特にその晩はお春も居残って、これは有り合せの座布団に毛布を被って次の間で寝た。翌朝お春は先日妙子に怒られたので、パンでもあるとよいのでございますが、生憎切らしましたのでと、わざと紅茶と果物だけを出すと、奥畑は悠々とそれを食べて出て行ったが、その数日後に妙子は退院して甲麓荘の部屋に帰った。尤も、まだ暫くは安静を要するとのことだったので、その当座はお春が毎日蘆屋から通い、朝早くから夜遅くまで詰め切って食事その他の世話を焼いたが、そうこうするうちに花と云う花は一重も八重も残らず散り、菊五郎は大阪を打ち上げて行ってしまった。妙子がほんとうに出歩けるようになったのは五月の下旬からであったが、幸いなことにいつからともなく貞之助の態度が軟化して、公然「許す」と迄は云わなかったけれども、彼女が出入りすることに最早や異議を挟まない意向であることを明かにしたので、妙子は六月中殆ど日に一度は蘆屋へ来て食事をし、せいぜい滋養分を