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はですがたまんねんわかしゅ

艶容万年若衆

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《艶容万年若衆(はですがたまんねんわかしゅ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 33,800 字 · 67 頁

青空文庫

ただ惚りとしてしまうのです。

それを知っているから悪賢い呉羽之介は、一つ処に長くは住まず、広い江戸の中をかしこ此処と移り住んで、身をくらまし乍ら益々悪事を重ねるのであります。

ある春の宵でした。今宵も呉羽之介は、此頃馴染んだ奥女中が丁度宿帰りの日に当るのを幸い、諜し合せた茶屋へ行こうと、小梅の隠れ家を出で立って、春夜の微風に頬快く吹かせ乍ら、吾妻橋へと差蒐かります。小唄口ずさみつつ橋の丁度半ばまで来たとき、通りすがった一人の武家が、薄闇に顔を透し見つつ声をかけました。

「呉羽之介どのではござらぬか?」

呉羽之介はその声音を聞いて渋い顔をした。もう小一年あまり出逢うたこともない、あの堅人の露月の声でありました。然しいともなつかしげに、

「これはこれは露月先生、ついお見それいたしました。その後存じながら御無沙汰」

「それはお互のこと――然し乍ら今此処で出逢うたは幸福。実は是非其方に逢わねばならぬ訳あって此頃御住居を片里に訊ね、小梅にまでお訪ねいたそうとしたところ……」

「それはそれは恐れ入りました。御用もあらば此方より、早速推参仕りましょうに」

呉羽之介はこの男と話すのが鬱陶しいのと、殊に今夜は女との出会の約束があるのとで、一刻も早く別れてしまおうとしました。