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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁
女たちは、小伝馬船の上から、マンが、煙草をのむのに、妙な点火器具を使用していたのを、好奇の眸で、遠望していたものらしい。
「あんたはん」と、桃色傘の女は、いく度か、火をつけてみたあと、「これ、あてに、ゆずっとくなはれや」
「いえ、それは、……」
「タダやないわ。お金、たんと払うさかい」
「お金、頂いても……」
「二円、どう? あんたはん等、一日働いたかて、五十銭にも、ならへんのやろ。二円、大金よ。……ほな、三円」
「いやです」
桃色傘の女は、狐のように、眦をつりあげて、軽侮のいろを浮かべた。
「ゴンゾの癖して、三円なんてお金、いっぺんでも持ったこと、あらへんのやろ。黙って、ゆずったが、増しやで」
「ゆずりません。かえして下さい」
「ほな、五円、どや?」
まだ、未練があるらしい。後には、ライターなど、掃きすてるほどになったけれども、そのころは、珍品中の珍であった。それを、女仲仕風情が持っているので、洋装婦人は、自分たちが使う方がよっぽど似つかわしい、と思ったものであろう。権利があると思ったのかも知れない。
「失礼ですが」と、横から、新之助が、「それは、五十円でもゆずりますまいなあ。