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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

その夜、マンは、金五郎から、角助の申し出を聞かされて、笑いだした。

「なんですか。そんなことやったの? 角助に、なんの仁義を立てるの? どんなことがあっても、あんたが、行きなさいよ」

と、強く、武蔵温泉行をすすめた。

その旅先で、どんな途轍もないことが起るか、もとより、マンに、わかろう筈はなかった。

遠足の当日は、あいにく、雨になった。しかし、風をともなわぬ、春雨のような、しっとりした降りかたで、かえって、旅情を添えるものといえなくもなかった。

戸畑駅は、閑散である。九州鉄道の幹線が開通し、この戸畑町に停車場が出来たのは、三年ほど前、人口も、六千人に半満ちているにすぎなかった。しかし、筑豊炭田を受ける洞海湾の一角の町として、海岸には、鉄道院が設備した、近代的な炭積機械が、巨大な鉄の昆虫のようにそびえ立って、秋の雨に濡れている。牧山にあるホイスト・クレーンの繋船壁も、工事が進行中で、もう、完成が近い。

雨中に煙る、こういうものを眺めながら、大庭春吉は、かたわらの金五郎をかえりみて、

「港も、石炭にかけちゃあ、盛になるばっかりじゃなあ。今に、日本一になるぞよ」