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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

親方思いですけ……」

「守りは、おサクが居る筈じゃがなあ」

「女に委せては、居られんとでしょう。そのうち、親方さんのお伴して、帰って来ますわ。……お姐さん、番茶でも」

「はい、おおきに」

ヨネは、お茶を飲み、十分ほど、話して帰った。夫の放埒と、メカケの愚痴ばかりである。

その夜も、マンは、一人で寝た。

助役になってから、すこし大きい家をあてがわれた。といっても、部屋仲仕のいる長屋の一角、六畳と四畳半、二間の古ぼけた家である。それでも、彦島の家より、ずっと上等であった。

深夜、マンは、奇妙な物音に、眼をさました。

裏木戸をこじあける音、やがて、足音を忍ばせて、何者かが、マンの寝ている六畳の部屋へ、近づいて来た。

マンは、耳をすました。

月が出ているのか、表からの光で、家の中は、ぼうと明かるい。そのうす明かりで、枕元の置時計が見える。何時ごろかと思い、顔を近づけると、そんなことしなくてもええですよ、というように、チン、と、一つ、一時を打った。外では、風が吹いている。

足音は、襖の根に来て、立ちどまった。息を殺して、中の様子をうかがっているらしい。

マンは、蒲団の中に腹ばいになって、