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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁
それは、マンへの恨みもこめて、模範青年であった大川時次郎を、瞋志の地獄へ誘いこむのであった。
(あの男がいなくなれば、マン坊は、おれのものになるのだ)
盲目的な恋愛のエゴイズムが、時次郎に、そんな悪辣な期待を抱かせていた。
時次郎の切なる願いにもかかわらず、金五郎は、海には落ちなかった。敏捷に、ロープをよじ登って、欄干に達すると、ひらりと、舷をおどりこえて、甲板に消えた。
三分も経たぬうちに、船上に、姿をあらわした。欄干から、身体を乗りだし、下の伝馬船に向かって、
「すぐに、棚吊りに、掛かれ」
と、怒鳴った。
船の進行中に、舷側に、手揚げ荷役の段取りをするなどは、異例に属する。第一、危険であるし、これまで、一度も、例がなかった。しかし、船に乗りこんだ金五郎は、短時間の間に、その諒解を得たものらしい。これも、交渉の結果とみえ、船の速力が、一段と落ちた。
出発のときから、充分に、打ち合わせは出来ていたので、金五郎の号令で、仲仕たちは、敏活な行動を開始した。
金五郎が、舷側に、縄梯子をぶら下げた。それを伝って、三人ほど、甲板に上がった。ロープや、棚板が、次々に操作され、見る間に、第三ハッチの舷側に、六段の雛壇が出来あがった。