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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁
面倒なので、金五郎は、無抵抗作戦に出た。
マンは、お茶入れに、立った。
「金さん」
急に、新之助は、坐りなおして、あらたまった顔になった。緊張の面持である。
「うん?」
「お前と江崎との喧嘩が、妙な風になって来たよ」
「妙な風?」
「どういうたら、ええか?……さっき、友田喜造の使いの者が来てな――この喧嘩の仲裁を、自分がやりたいので、中に入らせて欲しい。その仲直りの会場には、「飛鳥」を貸して貰いたい。吉田磯吉親分も、出席するかも知れん。……そういうんじゃよ」
「断ったら、ええじゃないか」
「一度は、断ったんじゃよ。そしたら、向こうで――友田喜造の顔をつぶすつもりか? それなら、それで、考えがある。顔に、泥を塗られて、黙っては引っこめん。……そんなことをいう。なにも、こっちは、友田の顔をつぶしたり、泥を塗ったりした覚えはないのに、……どうも、この、顔――という奴、この世界じゃあ、憲法みたいなもんでなあ……」
――顔。
仁侠とやくざの世界に打ち立てられた、黄金のピラミッド。顔が立つ。立たぬ。顔に免じて。顔をつぶした。つぶさぬ。――傲岸と、矜特とが作りだす頑固一徹の虚栄心が、歪曲されたヒロイズムとなって、男性的と錯覚される。