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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁
「箪笥をあけて、黙って借るんかな?」
「そうじゃ」
「借るんなら、鍵を作ってあげてもええぞな」
「どがいにしたら、同じ鍵ができる?」
「鍵穴に、墨を塗りつけてな、半紙で押して、型を取って来なさい」
「そうか、おおきに」
かんは鈍いけれども、清七の腕の方は、金五郎は信用していた。馬の蹄鉄でも、馬車の軸でも、柑橘類の剪取に使うハサミでも、清七は、馬鹿叮嚀に念を入れるので、よその鍛冶屋のよりは、数等堅牢で永持ちがした。きっと、ちゃんと、箪笥に合う合鍵ができるにちがいない。
やがて、馬車は、松山市内に入って行った。城下町の名残りをとどめている古い家が、いたるところにあり、武者窓のついた部屋の内側から、パタン、パタン、と、伊予絣を織っている機の音が聞えて来た。
萱町にある果物問屋の前まで来て、馬車をとめた。※という、伊予蜜柑を一手にあつかっている店である。
のれんをくぐって、金五郎は入った。暗い中に香ばしい果物のにおいが立ちこめている。
ひっそりとした店の帳場で、内儀が一人、老眼鏡をかけて、雑誌を読んでいたが、表の方をすかすようにして、
「どなたかな、もし?」と、顔をあげた。