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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁
あたりは、急に、しいんとなった。
マンは、そっと、夫の胸に、耳を持って行った。それから、立ちあがると、台所に行った。神棚の燈心から、蝋燭に火をうつして、「玉井組」の弓張提灯に立てた。
座敷に来た。鏡台の前で、身支度をととのえた。旅の準備は、先刻、完了している。風呂敷包みを、玄関口に出しておいてから、右手に提灯、左手に、鉄瓶を持って、寝室に入った。
渚に打ちあげられたマグロのような恰好で、ころがっている夫に、蒲団を着せかけた。それから、鉄瓶の水を口にふくんだが、ひきつったように、青ざめている夫の顔を見ると、ふいにたらたらと、涙が流れ落ちた。
「ぷウッ、ぷウッ」
と、二度、顔に、水をふきかけた。
金五郎の顔の筋肉が、びくついて、息をふきかえす気配がわかると、あわてて、寝室の外に飛びだした。
階段のところへ行き、五六段、登ってから、
「時やん、時やん」
と、声をかけた。
一睡もせず、下の様子に気を配っていた大川時次郎は、這い出て来て、踊り場に、緊張で歪んだ顔をのぞかせた。
「なんけえ?」
「うちの人が、気分が悪いと、いいよる。あたしは、街の薬屋に一ッ走り、行って来るけ、あんた、しばらく、介抱しといて」