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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁
わたしが、その間、若旦那のお相手をしとりますけん、……」
豆八は、出て行った。
金五郎は、油紙包みをほどいた。一個の財布が出て来た。東京で、般若の五郎から奪われたものだ。中を調べてみると、なに一つなくなっていない。金も、一銭もちがわない。
お京の手紙が、入っている。
「金五郎さん、浅草で逢いそこねて、残念でした。般若の五郎さんが、つまらぬおせっかいをしなかったら、久方ぶりでお目にかかれたのに。でも、お逢いした方がよかったか、わるかったかはわかりません。
五郎さんが取って来た財布をおかえしいたします。
女が、一生のうち、ほんとに命をかけるということが、何度あるものでしょうか。他の女の場合は知りませんけど、あたしには、一度しかなかったように思います。そして、そのかけた命は、まだ、なにかの大切な仕事をしのこしているようで、歳月にかかわりのない燃えかたをしています。
金五郎さん、
あたしはあなたを恨んだりはして居りません。あなたが角助に斬られたとき、あたしは、毎朝、暗いうちに、蛭子神社に、「お百度」を踏みに通いました。いうまでもなく、あなたの命の助かるように。