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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁
父卯八や、兄卯太郎、それから、仲介の村長への義理を立てて、黒石家を飛びだすことを我慢していたのであるから、金五郎にとっては、もっけの幸であった。
玉井家に帰って来ると、父や兄はなにもいわなかったが、嫂のスギは、
「この、糞馬鹿が」
と、以前より、数倍も、金五郎を酷使し、虐待した。
黒石家から、訴訟が起された。名誉毀損、結婚詐欺、財産横領、器物破壊、家宅侵入、損害賠償、暴力行為、傷害、印鑑・私文書偽造、貞操蹂躙――あらゆる罪名が、にぎやかに、金五郎のうえにつけられた。
金五郎は、苦笑した。
「もう、なんにも、いわん。ただ、おれは、ヤス坊の身体に、指一本、触ったことはない。暴力行為で、貞操蹂躙されかかったのは、こっちの方じゃ」
そのことだけを、釈明した。
黒石家からの復讐は、いろいろな形で行われた。それは、しだいに、悪質になった。
この近郊農村一帯は、四国東部、阿波徳島の影響をうけて、浄瑠璃が盛だった。吉藤にも、立派な衣裳や人形を持った「温泉座」という一座があり、百姓片手で、三味線をひき、デコを使う者もあった。金五郎も、若手の語り手とされていたのに、祭の日になると、誰も三味線をひいてくれず、人形も動かしてくれる者がなかった。