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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

そこは、わたしも根性が悪いけ、こっちへ帰る前に、「六ゾロ」の方へ廻ってみました。案の定、わたしのカンのとおり、息子さんは「六ゾロ」に行っとって、もう、ビールを飲みよりました」

「そうか」

「大将、まあだ先があります。息子さんは源さんに話して、友達を迎えにやりよったですよ。いつもいっしょに飲む仲よし、洗濯屋の星野順一さん、鉄道検車所の岩下喜代光あん、早速、小女が使いに出て行きました。一人で飲むのはさびしいとでしょう。大将、もう、大丈夫ですばい」

コヨは、大任を果した斥候のように、逐一報告すると、ほっとした面持で、チョコチョコと、廊下を去って行った。

金五郎も安堵はしたが、妙に、気持が酸っぱく、口中が苦くて仕方がなかった。

(もう、大丈夫――なにが、大丈夫というのか)

金五郎は、かえって、説明しがたい不安と昏迷とに襲われた。しかし、勝則と光丸とが、「丸金」を出て、どこかの待合にでも行くのではないかと考えていたので、ともかく、二人が別々になったということだけは、金五郎の気持を軽くした。

(勝則は、光丸と切れようと決心したのかも知れん)

そうとも思われる。ところが、この、自分の方にとっては、最上、好都合の筈のことを考えているのに、金五郎は、何故か、晴れ晴れとならぬ自分の気持が不思議だった。